ARC TiAlN(アーク ティーアイエーエルエヌ)の話

Arc方式TiAlN

さて、先月のブログではHCD方式(ホロカソード)の話をしましたが、
今回は、Arc(アーク)という方式についてです。

Arcとは

当社にはArcコーティング装置が5基(DLC「AC-X」も入れると計7基)あり、多種類のコーティング処理を行っております。

Arc方式はHCD方式と比べ、膜表面に微細な凹凸「ザラツキ」が発生するデメリットを先月述べましたが、それ以上に大きなメリットがあります。
それは「融点の違う2種類以上の合金原料を用いて成膜ができる」ということです。

例えばTiAlN(窒化チタンアルミ)がそれにあたります。
これは、鉄系材料の加工条件や硬度が上がることで、膜性能の硬度、耐熱性向上要求があり、開発された膜です。
また、Arcコーティング装置も自動運転が可能であり、多元金属化合膜を安定して成膜できることから、工具向けコーティング装置の主力と言えると思います。

Arc方式TiAlNコーティング

この方式でのTiAlN成膜を説明しますと、
真空炉内壁に原材料であるTiとAl合金(ターゲット)を設置し、陰極としてアーク放電させると、表面に数ミクロンの大きさで瞬間的蒸発→イオン化が起きます。ターゲット周辺のN(反応ガス)もイオン化し、マイナスの電位を掛けた処理物(製品)に引き込まれて成膜します。

HCD方式で、原材料にチタンとアルミの比率が3:7の合金を用いて成膜しようとすると、
低融点のアルミが先に蒸発成膜後、チタンが成膜し、合金が変化してしまします。

その点Arc方式ですと、ターゲット表面に点状の瞬間的な金属蒸発が複数起きるため、
得られる膜組成比も同比率「3:7」のTiAlNが得られます。
文章にするとややこしいですが、アーク放電は溶接にも使われており原理はシンプルです。

Arc方式コーティングのラインナップ

Arcで多く使われる金属元素は、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Al(アルミ)が代表的です。
TiAlN、AlCrNは鉄系鋼材を高速切削する工具に不可欠なコーティング膜種です。
これに微量のSi(シリコン)、B(ボロン)等含有してさらに性能向上を図った膜種もあります。
当社のラインアップにおいては、TiAlNをはじめに、TiSiN系「OS-T」、CrSiBN系「OS-CⅡ」、AlCrSiN系「OS-Ⅶ」があります。

当社のTiAlNについて詳しくは製品ページをご覧ください。

今後も、加工効率向上(コストダウン、残業時間削減)・環境改善(切削油での周辺汚染)への取り組みで、より高性能膜への要求が続いていくと思われます。


このブログの編集者

株式会社オンワード技研
株式会社オンワード技研

1986年創業、DLC・セラミックコーティング・表面処理のプロ集団。
「EVER ONWARD=常に前進する。」をモットーに、コーティング専業メーカーとして全国のお客様の「ものづくり」を支えています。

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